山吹日記

趣味や日々の生活をまとめていきます。

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実家を離れて九州へ

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

こんにちは。

面白いお題があったので、今日はこちらについて書いていこうと思います。

 

私の記憶に残っているのは、就職先へ引っ越した日だ。就職先は入社してから約1年は全寮制の職場で、研修先は九州にあった。

22年間実家で暮らし、彼女とも付き合って2年目という私は、出発の1週間ほど前からとても心細かったのを覚えている。

 

家族に最寄り駅まで送ってもらい、そこからは彼女と共に羽田空港へ向かった。最初は冗談を言い合っていたが、品川駅で乗り換えをする頃にはすっかり口数も減り、お互いに目を合わせたら泣きそうになる程だった。

 

いよいよ羽田空港へ着き、搭乗券を発券。荷物を預けて出発を待つ。

3月下旬の国内線ターミナルは、春休みを謳歌する学生や家族連れの笑い声で満ちており、私たちだけが取り残されているようだった。

 

航空機の離陸1時間前。行きたくない気持ちを抑えてターミナルのソファを立った。

彼女を電車の改札へ送る途中、エスカレーターを下りながら涙が溢れる。振り向かずに改札まで進むが、思いの外早く着いてしまった。

諦めて振り向くと、彼女も泣いていた。

お互いに、初めて涙を見せた瞬間だった。

「体に気をつけてね」「連絡してね」「早く帰ってきてね」彼女の言葉に、ただ俯いて返事をするしかできなかった。離陸まで残り50分

 

改札をくぐり、何度もこちらを振り返りながら少しずつ遠くなっていく彼女見送った後、航空機の手荷物検査に向かった。

 

もう涙は出なかった。

 

私の社会人生活が始まった。

 

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